神々の遺物注目
神々の紀の古文字「空」
老王の舌の面に字が一つあった。肉の中から生え、画が組織に沈んでいる。古卷にはこう記されている。第一の字、人の舌に現れ、骨の内に長じ、王者亡ぶ。
最終更新:2026.06.20
検屍のとき、老王の舌をめくった者が、舌の面に字が一つあるのを見た。
その字は肉の中から生えていて、画が組織に沈み、縁は周囲の粘膜と一体になっていて、もとからそこにあるべきもののようだった。布で拭いても取れない。刃で軽く削れば、削れてくるのは肉だ。五画あり、起筆は舌先の側、収筆は喉の方を向いている。
それは神々の紀の古文字で、「空」と読む。それを見分けた者は、300 年誰も動かしていない『王陵祭文』の写本を繰った——その写本はもともと第三の家が預かっていたもので、第三の家が絶えた後はグレイペン家が代わって管理している。紙は脆く、木片で頁をめくらねばならない。そこには神々の紀の末年の一条が記されていた。
第一の字、人の舌に現れ、骨の内に長じ、王者亡ぶ。
古文字が全部で何字あるのか、誰も知らない。祭文に一覧はなく、註解もない。写本の中で字数に触れている箇所は、どれも前の代の誰かに塗り潰されていた。塗り方はきれいで、画の影すら残っていない。
だが、これが「第一の字」であるなら、第二の字も、第三の字もあるということだ。それらが誰の身に生え、どの日に現れるのか——古卷は書いていない。あるいは書いてあったのに、その頁が破り取られている。そこまで繰ると、切り口は揃っていた。刃で裁ったように。
グレイペン家の者は規矩どおりこの一条の副本を写した。写本は二部作り、一部は庫に留め、一部は教廷に呈する。今回は一部しか写さず、庫に留めた。教廷に呈するほうは、字を書く者が筆を置いて、上からの沙汰を待った。上からの沙汰は、ずっと来なかった。
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