投稿|あの未明、うちの階下の看板に、読めない字が一つ増えていた
匿名の投稿。未明の03:17、階下の薬局の看板が一度ちらつき、字が読めない形に入れ替わった。4秒ほど。翌日、看板は何ともない。携帯のあの一枚だけが真っ黒だ。
(本稿は読者からの匿名投稿である。内容は未確認。)
こういうものを書くのは得意ではない。あの日の出来事を順番どおりに書く。判断はそちらでしてほしい。
その夜は眠れなかった。未明の03:17、私はベランダで煙草を吸いながら、階下の24時間営業の薬局を見ていた。看板はいつも点いている。3年見てきて、どの字も覚えている。その日は少し湿っていて、手すりはべたついていた。道に車はなく、薬局の入口にある飲料のクーラーだけが唸っていた。
そのとき、看板が一度ちらついた。
蛍光管に異常はなく、明るさも変わらなかった。そのちらつきの一瞬で、看板の字が別の形に入れ替わった。画数が多く、びっしり詰まっていて、私には読めない——おかしいのは、その一瞬だけ、私にはそれが何を言っているのか分かった気がしたことだ。我に返ったときには、看板はもとの字に戻っていた。
時間は計っていない。あとから思うに4秒ほど、もっと短かったかもしれない。私はまず目をこすり、居間の時計を振り返って見て、それから携帯がポケットに入っていることを思い出した。
携帯で撮った。そのときは画面に何かが写っていて、はっきり見えていた。ところが翌朝アルバムを開くと、その一枚は真っ黒だった。薬局の看板の灯りすら写っていない。ファイルの時刻は03:17で止まっていた。携帯を店舗に持って行くと、店員は20分かけて調べ、カメラモジュールは正常です、システムを更新してみてください、と言った。
階下に降りて、薬局の夜勤の店員に訊いた。昨夜は何も異常はなかった、看板が壊れたことはない、と言われた。話している最中、彼の目が一瞬だけ入口の外へ向いた。その向きは、私が前の晩に看板の字が変わるのを見た角度とちょうど同じだった。それきり彼は俯いて会計をし、こちらを見なかった。
翌日の未明、私はまたベランダに出て、04:00まで立っていた。看板は看板のままだった。三日目も四日目も同じだった。同じタイルの上に戻って立ち、煙草を4本吸い終わるまでいたが、何も起きなかった。
私は携帯のメモに時刻をつけはじめた。どの日に眠れなかったか、何時にベランダに出たか、異常はあったか。11日つけて、字が入っているのはあの日のあの一行だけだ。メモはあとで画面を撮って、パソコンにも一部置いた。いつか消えるのが怖かったからだ。
説明は自分でも考えた。ああいう看板がLEDのパネルなら、プログラムが飛べば字が乱れる。看板の業者に電話をかけると、出た人が施工票を調べて、あの年に入れたのは固定のパネルで、字は流れないし、変えることもできない、と言った。
このことは友人3人に話した。一人は疲れすぎだと言い、一人は見間違いだと言って、睡眠不足の記事を送ってきた。三人目は聞いていたのに、途中で急に「さっきどこまで話してた?」と訊いてきた——数秒のあいだ、まるごとそこにいなかったみたいに。私は問い詰めなかった。話題を変えた。
それ以来、誰にも話していない。だからここに書く。もしあなたも未明の3時過ぎに、どこかの看板や、よく知っている誰かの顔が「ちらついて」別のものに変わるのを見たなら、写真を撮って、何部かバックアップを取って、携帯だけに置かないほうがいい。
それから、その写真が理由もなく真っ黒になったら、店舗はシステムを更新してくださいと言うだろう。私は更新した。
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