林缺
主人公

林缺

青岐坊市 · 百草丹舗の薬童

青岐坊市・百草丹舗の薬童、凝気三層の底辺散修。天才の資質はなく、ただ「欠け」を見抜く眼を持つ——他人の功法のどこが誤りか、一目で分かる。

陣営
青岐坊市 · 散修
関連キャラクター
0 人
陣営メンバー
0
関連項目
0 件

キャラクタープロフィール

背景 / 動機 / 観測スタンス

林缺

青岐坊市・百草丹舗の薬童で、凝気三層の最底辺の散修。彼は天才ではなく、名師もなく、後ろ盾もない。頼りにするのは慎重さと、忍耐と、計算だ——手を出すときには必ず逃げ道を残す。

彼の生涯最大の元手は、「欠」を見抜く一双の眼だ。他人の功法がどこで吐納がうまくいかないか、どの丹方が薬性で相剋するか、どの符が気を断たれているか——一目で見て取る。だが問題が見えるからといって、解けるとは限らない。一つの欠を補うには、試行錯誤がいり、材料がいり、人に気づかれぬよう隠さねばならない。

廃丹の山のなかの散修

彼は百草丹舗で薬童をしており、日々の仕事は廃丹の甕を清め、廃丹を選り分けることだ。人に捨てられたこれらの廃丹の残滓のなかでこそ、彼は坊市の最底辺の残酷さを少しずつ見抜いていった——散修が練る功法は多くが欠を抱え、練るうちに脈を傷め、走火し、最後には廃丹の山のかたわらの、誰にも引き取られぬ屍となる。

彼が練るあの『吐納巻』にも欠がある——彼は誰よりもそれをよく知っている。

残巻のなかの吐納

6 か月前、薬指を失った一人の老いた散修が、欠けた吐納の功法を一巻、彼に売った。彼はそれを練り、脈を傷めた。だが、この残法の上でこそ、彼は初めて「欠を補う」ことに手をつけた——通りの悪いあの一息を、断たれた微脈を迂回させたのだ。

彼はそれを「繞(めぐらせ)」と呼んだ。功法は廃物だったが、彼の手にかかると、向きを変えた。

凝気散の回煞率

彼は計算を始めた。一炉の凝気散の回煞率、走火した散修一人が市価でいくらになるか、補方一枚が霊石何顆と換えられるか——他人が計算しないこれらの帳簿を、彼は実に細かくつける。

霊石を一顆また一顆と数える。左の肋の下の、修練でぶつけてできた暗紅の重い澱みは、彼が心に隠し、人に知られるのを恐れる傷だ。

三人目

坊市で次々と散修が走火を起こし始めた。西街で一人、南市で一人、また一人——彼は後を追って見るうち、倒れた者たちが修めているのは同じ功法ではないのに、ぶつかっているのは同じ位置の欠けだと気づいた。

一つの通りで、3日に一人倒れる。彼の胸には、口に出せない判断が芽生えていた。これは偶然ではない、誰かがこれらの功法に、同じ欠けを仕込んだのだ。

補方には買い手がいる

坊市で30年を渡り、9度の火を経て9度とも死ななかった老散修が彼を訪ねてきた。相手は彼の知らなかった二つのことを告げた。補方には買い手がいて、買い手は「地下市場の上」にいること。そしてこの月、坊市では何かが加速していて、上の者がある動きを待っているということ。

彼は売らなかった。ただ相手が差し出してきた、符を刻んだ木札を一枚受け取った——次は、彼の方から相手を訪ねるのだ。

欠を見るとはどういうことか

左の眼が見るものに形はなく、色もない。強いて言うなら、本来つながるはずのものが途中で一小節だけ空いていて、その空いた一小節がいちばん目につく、という具合だ。

初めは死物にしか見えなかった。罅の入った碗、錆びの抜けた錠、気の絶えた符。のちに生きた者にも見えるようになり、他人の胸元を凝視しないでいられるようになるまで、ずいぶんかかった。

長く見ていると眼が痛む。夜更かしの酸っぱさではない。眼の奥から後頭へ抜ける鈍い圧で、来れば半日は休まねばならず、その間は何も見えない。

このことを誰にも言っていない。坊市には何かしら隠している者が少なくない。隠しきれる者だけが長く生きる。

退き道を残す

彼には癖がある。手を出す前に、どう収めるかを先に決める。缸を清めるときは一歩で戸口に退ける位置に立つ。人と話すときは路地の口に背を向けない。人から何かを受け取れば、その日のうちにいつどう返すかを決めておく。

臆病さではない。坊市の底には身を起こす機会などなく、あるのは生き続ける機会だけで、生き続けるには自分を袋小路に歩み入れないことだ。

勘定もする。一炉の丹の出来、走火した散修が遺したものの相場、一言がどこの耳に届くか——他人が面倒がって数えないものを、彼は数える。数え損じた一度を、彼は負いきれないからだ。

左肋の下のあの傷だけは、勘定が合わなかった。自分の功法を補ったときに撞いたものだ。補いは効き、代価も残った。彼はその場所に触れず、人にも見せない。

0 人の観測者がいいねしました

観測者コメント

このキャラクターについての議論

観測者コメント

0 件

まだコメントがありません。最初の観測者になりましょう。

最新の章