分類できない観測記録
北境の果てに一つの壁がある。壁の外は古戦場で、最古参の辺境兵ですら語り切れぬほど古い。そこから戻った数人が残した言葉——石に刻まれた一段欠けた円、近づくほど言うことを聞かなくなる血、夜ごと何度も消されては再び現れる音。
灰冠城下城の茶肆から手を経て写し出された市井の噂話。三度目の「病死」の継承人、一夜で主人の名を忘れた老僕、袖口の下の落ちない黒い紋——下城の人間のほうが、上城よりよく見えている。